摩天楼Devil
「ヤルことねぇ……妃奈って、恋人いたことあるの?」


下を向いて、ひたすら逃げようとしていたので、表情は分からなかったけど、その声はやけに怪しげで……


「いました、いました!れ、冷蔵庫の中見たいし、買い出し必要だったら、買い物行かなきゃいけないし、早く放して!」


耳元で舌打ちが聞こえた。


あ、そうか。放して、って、タメ口にしたから?


「あ、あの、ごめんなさい……思わず……」


「妃奈、こっちを向いて」


膝に乗せられたまま、恐る恐る彼の方を向いた。


そこには初対面のときのような、柔和で、大人びた笑顔があった。


「謝ることはないだろ?所詮、3つしか違わないんだし、たまにタメ口を聞こうが、気にしないよ」
< 39 / 316 >

この作品をシェア

pagetop