摩天楼Devil
本音を言ってしまえば、かけてない素顔のほうが、優しそうなんだ。


キスしてる時に気づいた。


「コンタクトにしたことあるけどね。たまに、忘れちゃうんだ。急いでる時とか」


「ああ、分かります。私もたまに、リップグロス忘れちゃうんです」


私の言葉に対し、

「一緒にしないでくれ」

と、言ってきた。


そのわりには、メガネケースを置いたまま、開けない。


「今はちゃんとしてたみたいだな」


口に付いていた、とティッシュで唇を拭きはじめた。


その姿に、カァァ、と顔が熱る。


「妃奈、キスして落ちないグロスか口紅を使って」


ティッシュを丸め、傍の屑入れに、彼は投げ落とす。


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