摩天楼Devil
「答えろ」


「い、いません」


「なら、俺でいいだろう」


口説かれ……?

い、いえ。さっきだって、口説かれてたわけじゃなかったし。


「私みたいな、ペッタンコは嫌なんでしょ!?」


顔を離そうとした。

が、がっちりと後頭部で押さえられた。


ふぇ~、勘弁して。


唇に互いの息がかかるたび、心臓が破裂しそう。


彼は何も答えず、またキスをしようとした。

覚悟を決め、目を閉じた時だった。


どぼどぼ、と洪水のような音がした。


「あ、お風呂!」


100円を笑うつもりはない。


一番に水道代を考え、藤堂さんの肩を押すと、浴室に向かって、走った。


「ああ、溢れてるぅ。もったいない」
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