摩天楼Devil
蛇口を締めると、浴室の隅に置きっぱなしだったバケツに、お湯を汲む。


「……それをどうしろって言うんだ?」


いつの間にか、背後にいた藤堂さん。


不意打ちで人に近付くの趣味かしら?


「洗濯に使えばいいんです。掃除でもいいし」


休みの日はだらしがないママも、実は倹約家だったりする。


彼女から、こういったちょっとした節約行為は教えられてた。


クスクス、と藤堂さんは笑い出す。


しまった。この人は通信販売会社社長さんの息子さんだった。


なんで、こんな古くさい(叔父さんごめん)アパートを選んだのかは知らないけど、

節約なんか興味ないわよね?


しかも、ババくさいって思ってるんだわ。
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