摩天楼Devil
そう言いながら、寂しそうなのは、篤志さんの方だった。


「お父さん、嫌いなんですか?」


しまった。

短刀直入すぎたかな?


「冷めるな。食べるよ。妃奈もお腹空いてるんじゃないのか?」


話題を変えるということは、触れてほしくないんだよね。


私は聞かないことにした。


「いえ、平気です。じゃ、帰りますね」


「待って。送っていきたいから」


「あ、いいですよ!そんな遅くないですし」


「普通は男が女を送るものなんだろ?」


篤志さんは困ったような口調だった。


ますます、断らなきゃと思った。


しかし、彼が困っていたのは、私を送るか送らないか、ではなかった。


篤志さんは大真面目に言った。
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