摩天楼Devil
「料理が冷める」


「はい?」


「せっかく作ってもらった料理が冷める。でも、妃奈は送りたい」


本気で困ってるらしく、うーん、と腕を組み、メガネを引き上げる。


その姿が妙なんだけど、なんだか可愛くも見えて、

「ぷっ」と私は吹き出してしまった。


篤志さんは不満げに睨む。


「なんだ?」


「あ、いえ……似合わないことを言ってるなぁ、って。だから、いいですって、一人で帰ります。

どーしても送りたい、っていうなら、レンジで温めて直してもいいですよ」


それはそれで、彼は迷うらしい。


やや考えた後、「送る」と言う。


てっきり食事を選ぶと思っていたから、今度は私が困惑してた。
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