摩天楼Devil
玄関で、出迎えたママに対しては、笑顔で挨拶し、私にもその顔を見せた。


ママは喜んでたけど、私には作り笑いにしか見えなかった。


なぜ、彼の機嫌まで損ねたのか分からないまま、朝を迎える。


「バイトはどう?お手伝い、としか聞いてないけど」


と、親友の問いに、「まあまあ、楽しい」と答えた。


キスや写メのことなんて言えないから。


言ったとしたら、彼女なら即訴えに行ってしまいそうで怖かった。

なんで、怖いかは自分でも理解できなかったけど……


――篤志さん、まだ怒ってるかな。


不安になりながらも、学校帰りに、そのままアパートに寄った。


出迎えてくれた彼は、「やぁ、妃奈」と作ってない自然な笑顔を向けてくれた。
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