∮ファースト・ラブ∮ *sugary*【番外編】
「麻生……イチャつくんなら他のとこでやってくれ」
そんな場面を目の端で見ていたぼくの親友、葛野 睦(くずの あつし)は、注意をしてぼくと手鞠ちゃんに背を向け、教室から去った。
表情といい、口調といい、睦はとても不満げだった。
「あの……あたし……ここに来ちゃいけなかったですか……?」
手鞠ちゃんは不安そうに睦とぼくの顔色をうかがって尋ねてくる。
そんな困った顔もかわいいと思うぼくは、かなりの重症だ。
睦が煙たがるのも無理はない……と思う。
なんたって、睦はまだ彼女という存在がないからだ。
睦は面倒見がいいから、きっとその気になれば彼女くらいつくれるだろう。
そう言っているのに、本人はわずらわしいから嫌だの一点張り。
そう考えると、紀美子が妥当なのかもしれない。
彼女、紀美子は性格はさっぱりしているが、とても優しい女性だから。
かく言うぼくも、彼女の優しさに何度か助けられたことがある。
……説教も…………されたが……………。
「先輩?」
あ、しまった。
4ヶ月前のことを考えていたぼくは、膝の上に乗っている手鞠ちゃんを忘れていたことに気がついた。
手鞠ちゃんは悲しそうな表情をしていた。