∮ファースト・ラブ∮ *sugary*【番外編】

「手鞠(てまり)ちゃんが欲しい……ぼくの痕跡をつけてもいい?」


なんて、耳元で熱を帯びた声がした。


いいって……そんなこと、訊かないでほしい。


だって、だってだってだって!!

あたしの服、もうすでになくなってるんだ……。


あるのは……ピンクの下着だけ…………。


は、はずかしい!!



そう思って先輩の背中から両手を外し、自分の胸を隠そうとすれば……両手は先輩の片手で頭上へと持っていかれた。


「だめだよ?

ぼくの楽しみを奪おうとしないでほしいな」


クスリと笑う息があたしの耳にかかる。



お腹が一気にあつくなった。

「せんぱぃ~」

この熱い感覚を何とかしたくて、だけど、先輩でしかどうすることもできないのはわかっていて……見つめたら。


「あおらないでほしい」

意味不明な言葉を告げられた。


あおるって、なんですか?


「大きな宝石のような美しい瞳に涙を浮かべて……頬を赤くして……ぼくを見つめないでほしい。


ひと息に君を奪いたくなるから……」



「先輩……」

「久遠(くおん)……そう呼んでほしいな。

今だけでいいから」



コクンとうなずき、口をあけると……。



「久遠…………………」



彼の名前を……ゆっくりかみしめた。



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