∮ファースト・ラブ∮ *sugary*【番外編】
「ならないよ。
だって、久遠はあたしの王子様だもん」
「手鞠ちゃん……それ、卑怯……」
卑怯?
意味がわからなくなって久遠の顔を覗き込む。
彼は顔をゆがめて……ちゅっ。
キスしてきた。
久遠のキス、とっても甘くって好き。
甘いキスに酔いしれていると、「手鞠ちゃん、手をぼくの背中にまわして……」
悲しそうな声が聞こえた。
「あと、両足もぼくの腰にしがみついて……それで、痛みもマシだと思うから…………ごめんね……」
また、悲しそうな声。
ちゅっ。
あたし、悲しくないのに……苦しむ久遠をなんとかしたくて、今度はあたしから唇にキスをした。
「手鞠ちゃん……」
久遠があたしへと、距離が近づいてくる……。
普段聞かないような悪態があたしの耳に入ってきたと同時――――――。
「!!」
強烈な痛みがあたしを襲う。
あまりの痛みに、腰がベッドから弧を描いて離れる。
涙は……あふれてくる。
だけど………………愛おしいの……。
気持ちがあたたかになって……満たされていく……。
この涙は、痛いのもあるけど……だけど、それだけじゃなくって……。
「すき」
…………彼を感じながら意識を手放す最後の瞬間、声を振り絞って、そう言った。