これが恋だとするならば・・・
私だって逃げたい・・・。




生臭い血の匂い。

この見下すような冷たい声。


地雷を踏まれて爆発しかけの少年。





「・・・ク・ッソ!!」


ドタバタと走りだす音がして、
ガチャンと重いドアの開く音がする。



一人が逃げ出すと、
あとの二人も
大慌てで
それについていった。



「・・・ッフー・・・・・・。」


重い溜息が聞こえる。



私も逃げたいけれど、



その男子達が逃げても、



残されたその少年は、


この部屋を出なかった。






「・・・・・・ユウカ・・・。」



≪ユウカ。≫




暗闇の中で


少年が


確かに


そう呟いたのを



私は聞いた。





≪ユウカ≫、
それは少年の心に埋った地雷・・・。



屈辱的な言葉を投げられても、
同様せずにソコにいたのに・・・。




男子たちに投げかけた
冷たい感情のない声よりは




≪ユウカ≫と
一人愛しげに呟いたその声が



私を妙に安心させた。







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