確かにそこに、君は居た


次の日。
学校から帰ってきた俺は、たくさんチョコを鞄に詰め込むとミコトのもとへ向かった。
「ミコト、お待たせ!!」
俺は勢いよくドアを開ける。
ミコトはビックリしたように振り向いた。
「キヅキ・・・遅いよっ!!」
ミコトはサラサラのストレートの髪をなびかせてやってくる。
・・・とても、綺麗だ。
俺はミコトの髪にしばらく見惚れると、鞄の中からチョコを取り出した。

「俺、腹減ったからチョコ食うわ。」
俺はガサガサと包み紙を剥く。
銀色の紙からは美しい、滑らかなチョコレートが見えた。
俺はソレに一気にかぶりつく。
「うーん・・・うめぇぇぇ・・・」
口の中にチョコの甘さが広がる。
・・・幸せだ。

「もーらいっ」
「あっ」
ミコトは俺のチョコを奪い取ると、ワンピースの中に隠した。
「何すんだよっミコト」
俺は逃げ回るミコトを追いかける。
でも・・・ミコトはめちゃくちゃ速くて・・・
「ちょ・・・タンマ!!無理!!もー無理!!走れねー!!」
俺はパタリと倒れこんだ。
その拍子に埃が舞ったけど気にしない。
・・・・冷たい床が心地よい。
「いつも妹さんとこうやってるんでしょっ」
「え?」
ミコトがチョコをワンピースから取り出してジロジロ眺める。
「チョコレート戦争・・・だっけ?なかなか面白いじゃない。」
ミコトが俺の前にチョコを置いて笑った。
俺はすかさずチョコを掴み取ると、抱きしめた。
「待て、どうしてお前がチョコレート戦争のことを知っているんだ?」
俺はミコトの真っ白な顔を見上げる。
ミコトは人差し指を唇にあてて、

「秘密♪」

と言って、笑った。
・・・俺も、つられて笑った。


静かな建物の中には二人の笑い声が響いていた。
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