あたしと君とソレ。
小学校4年生の小雪。
本格的な冬に向かって寒さが増していく日々の中、甘い香りを漂わせるソレの熱と彼を想う心の熱が、そんな日々の寒ささえも吹き飛ばす。
名前も何も知らない彼に心惹かれた。
毎週土曜日、お母さんと一緒にこの店を訪れる彼は、毎回当たり前のように「いつもの!」とソレを頼み、美味しそうにソレを啜る。
サラサラな黒髪を揺らして「美味しい!」と満面の笑みを浮かべる彼の表情が大好きだった。
しかし、そんな彼が突然パタリと店を訪れなくなったのは小学校5年の秋。
秋と冬の狭間あたりの寒さを迎え始める、ちょうどそんな季節。
常連のお客様が突如姿を消した。