あたしと君とソレ。
あたしがこの店で大概の時間を過ごすようになったのは、
幼いながら親の目を気にし、家でのあたしの存在価値の無さに気が付いてからだ。
ここ最近、弟の誕生によってめでたくもあたしの存在が薄れた。
「お姉ちゃんになったんだから」といつの間にかそれが口癖のようになったお母さんに、
弟に見事な溺愛ぶりのお父さん。
弟を囲うようにお父さんやお母さんがあたしに背を向けると、
あぁ自分は邪魔者なんだ、と嫌でも自分の存在価値が分かってしまう。
悲しい。
辛い。
寂しい。
そして何より弟が羨ましくてしょうがなかった。
自分の家にいるのに、まるで他人の家にいるようで居心地が悪かった。
憂鬱だった。
家から逃げ出したかった。
学校がある日は下校の時間ギリギリまで学校にいた。
特に何をするわけでもなく、ただ教室でぼーっと時間を潰すだけ。
何もしない、何も考えない。
あたしにとってそれが何よりも心休まる特別な時間だった。
色のない毎日。
それはまるでモノクロの世界のように味気のない毎日はあたしにとって、何の意味も持たないただ退屈な人生に過ぎなかった。
あの日までは…