マイスタイル

最初にそれを感じたのは、最後に、チョコをもらった年の、ホワイトデーだった。

「友達と遊びに行ったのよ」


おばさんの言葉で、おれは相当沈んでいた。

人がこの日のために必死で大学を合格したというのに、人が、コクハクをしようと頑張ったというのに、


あいつはいなかった。


おれがお返しを持ってくることは、毎年のことだから言わなくても待っていると思っていた。


それからずっと会えなくて、おれはあいつのいない地へと引っ越した。

実験でずっと家に帰られず、帰ったときにはあいつは部活で忙しかったり。

そして、あいつはバレンタインにチョコをくれなかった。

下宿先を教えていたけど、そりゃ、わざわざ来るわけないよな。



だから今年は帰ってきた。

実験は終わらせて、帰ってこられるようにした。

なのにあいつはまたくれないという。


そのうえ、大事そうに手作りチョコを持って帰ってきて…



おれの知らないあいつが、憎かった。



大人になっていく。



離れていく


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