マイスタイル
ホワイトデー、マシュマロ伝説。
私は、みんなとホワイトデーのお菓子を奪い合っていた。
「倫子さんのクッキーはあたしの!」
「じゃんけん!」
「あっ!」
言い争っているうちに誰かが持っていく。
なんてごく当たり前のことしかできない女子高生の放課後だ。
倫子さんの作るお菓子は最高においしくて、いつか私がかの人にチョコレートをあげるときも、彼女に分けてもらった。
「祥子のフィナンシエすごくおいしいよ」
倫子さんのクッキーを逃してしょぼくれていた私に、倫子さんがそう言ってくれた。
「ありがと」
「ところでさぁ、みんなマシュマロもらった?」
見事に倫子さんのクッキーを手にした奈留ちゃんが、おいしそうに頬張って言った。
「マシュマロって‥‥なに?」
私が尋ねると、みんなが驚いてこちらを注目した。
「知らないの? バレンタインのお返しにマシュマロもらったらそれは本命なんだって」
「男子が知っているかどうかは疑問だけどね」
「へぇー」
私が感心している間に、みんなはちゃっちゃと恋バナに移っていた。
ときどきついていけない。
「祥子はチョコレートあげてないんだっけ?」
倫子さんがこっそりと尋ねてきた。