マイスタイル
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久々に祥子からメールが来たと思いきや、内容は色気の一つもないもので、

「怒ってるし」

とかいいつつ、うれしかったりもする。


おれはバイト先で昨日のメールを見返していた。

本当にあっさりしてるよな。人が告白しても、抱きついてくるだけで肝心なことは言ってくれないしさ。

一言くらいくれないと、付き合ってると言えるかどうか曖昧なところだ。

「こら、休憩なげーぞ」

店長が呆れた顔して休憩室にやってきた。

もうそんな時間か。

おれはカフェでバイトをしていて、結構店長と仲がいい。

たまに残り物のサラダとかベーグルをくれる。

「おまえ最近丸くなったか」

「店長がたくさん食物を恵んでくれるから」

「馬鹿。おまえは太らねーよ。性格が丸くなったと言ってるんだ」

丸くとはどーいう意味だ。まるで今までとがっていたみたいじゃないか。

「なんかいじめたくなるな」

店長がおれの肩を叩いた。

「で? 実家で何があった?」

ほらまた訊いてきた。

「おれ休憩終わったんでー行きま」

「あと十分やるから話せ」

「ずるいな大人は」

「おまえも大人になっただろうが」

「やだね。笑うもんな」

店長は百戦錬磨だからあまり自分の惨めな恋を知られたくない。絶対馬鹿にされるんだって。

「弟みたいにかわいがってやってるのに、なんだその態度」

もうひとつ。話したくない理由は、意外に歳が近いということ。

店長、千(セン)さんは、俺より八つ上の28歳。この歳で店長とは恐れ入る。

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