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「ばっ、さわんな!」

急いで駆け寄りもぎ取る。

「名前とかあったりすんの?」

「ねーよ!」

「これ自分で買ったの? 誰かにもらったとか?」

あーもう!

「おまえのだよ! 誰かさんがいつかのホワイトデーに受け取らなかったからおれのもんになっちまったの!」

「‥‥‥」

祥子は黙っていた。

暗くてよかった。絶対顔赤いもんな。

「これ、ちょーだい?」

「ヤダね。おれのもんだからあげない」

「さっきおまえのだよって言ったじゃん」

「元おまえの。今はおれの」

「じゃ、これから私の」

「違うの買ってやる」

「これじゃなきゃいや」

「駄目。しょーこさんは渡さない」

「名前あるんじゃん」

「今つけた。しょーこさん。おまえ同じ名前のやつはいやだろ」

「なんでそこまで」

「意地」

祥子は我慢できなかったのかげらげらと笑いだした。

「かわいー」

かわいいと言うな男に!

「ねぇ、マシュマロ好きなの?」

突然そんな質問をされる。

「だって、ちゃんとあるんだもん」

誰かさんがマシュマロ入りココアが好きだからだろ馬鹿。

「好きだけど?」

「じゃあ、チョコフォンデュしたときもマシュマロが好きだから買ったの?」

「うまそうだからって言わなかったっけ」

「いや、その」

急に祥子がしょーこさんを抱きしめてしどろもどろになった。

「おまえ、今日ヘン」

「いや、その」

「なんだよマシュマロマシュマロって」

「ほ、ホワイトデーにマシュマロもらったら、ほ、本命だって、き、聞いたから‥!」

どもりすぎ。

「わざわざ、おれが実際どーゆーつもりで買ったのか確かめようと、はぐらかしながらメールでおれが休みかどうか訊いて、寒い中ずっと待ってたってわけか」

祥子はうつむいていた。

「おっしゃるとおりで‥‥」

「べつにどっちでもいいじゃんか」

「あとね、あと、関係を確かめたかった、から」

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