cocoa 上
 こうちゃん…大丈夫かな?
 私のせいで怪我したからこんなことになっちゃったんだよね。
 ごめんね、こうちゃん…。涙が流れてきた。


「大丈夫…です。やれます、やらせてください」


 弱々しいこうちゃんの声。
 ゆっくりと立ち上がり、審判を見てぴーすをするこうちゃん。
 みんなはほっとして笑っていたけど
 私と中川先輩だけ気付いていた。
 こうちゃんがピースをして大丈夫って言うときは、
 本当は大丈夫じゃないって意味なんだって事。
 こうちゃんを見守る私。頑張って、こうちゃん!!


「なんだぁ~、お前まだやんのか。すげー気合いだな」


 谷口はこうちゃんの前でそう言った。
 こうちゃんが何か言おうとしたとき
 中川先輩はこうちゃんの前に出た。


「お前みたいなクズ部長じゃなくて、本当よかったわ」


「海斗…お前」


 谷口は舌打ちをして、位置に戻った。
 谷口はまた嫌な考えをしていた。
こうちゃんを見つめ、何やらまた何かを
しようとしていた。

 ピーー!試合が続行される。私は嫌な予感がした。
 谷口がこうちゃんの後ろにいる仲間に目で合図をした。
 私は観客席から降り、大きな声で叫んだ。


「こうちゃん!危ない!」


 私の声にこうちゃんは後ろにいる選手に気づき、谷口が投げたボールを見事キャッチした。
 こうちゃんは後ろに振り返り、新城高校の選手をあっさり抜け、その場からボールをゴール目掛け投げた。

 ボールは入らなかった。
 だけど、誰もが落ち込んだ時中川先輩がボールを拾い上げダンクシュートを決めた。
 ボールは見事入った。
 一瞬息を飲む観客席の観客達。だが、一斉に立ち上がり、中川先輩に盛大の拍手。
 こうちゃんは中川先輩の肩に腕を伸ばし、左の拳で頭に当てる。
 笑い合うこうちゃん達。

 新城高校とまさかの同点。誰もが驚いた。弱小高校だった私たちの高校バスケットボール部。
 新城高校の監督は、腕組みをしてその場から離れた。
 飽きられた新城高校のバスケットボール部。喜ぶこうちゃん。中川先輩。部員たち。
 すると、谷口は


「ふざけんじゃねぇ!」


 大きな声でバスケットボールを
 地面に叩きつける。会場が静まる。


「まだ試合は終わった訳じゃねー!俺ら新城高校はおまえ等みたいなカス校に負けねーんだ!」


 指を指す谷口。
 その先にはこうちゃん。

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