cocoa 上

 試合がまた始まる。


 ドリブルする谷口、一気に追い上げる。
 こうちゃんを避け、中川先輩からも避けた。
 そして、シュートが決まる。
 観客席は静まる。これが新城高校エース谷口なのか。
 本当に強いエースなんだ。

 こうちゃんと中川先輩は谷口を見つめる。
 本気になったのはこうちゃん達だけでは無いことを身に感じた一瞬だった。
 新城高校、綾瀬高校、新城高校、綾瀬高校。
 次々とシュートを決め合う二つの高校。
 バンバンバン ドリブルの音が会場に響いた。
 そして、運命のボールが入った。


「わぁーーーー!」


 会場が盛り上がる。試合終了の音。
 こうちゃんが中川先輩に飛びつく。


「やったあーーー!勝ったぁ!」


 床にしゃがみ込んで喜ぶこうちゃん。
 中川先輩も笑っていた。


「負けた…俺ら新城高校が…。あんな弱小高校に」


 がっかりする新城高校の部員たち。
 谷口がこうちゃんに近付く。
 中川先輩がこうちゃんの前に出る。だが、こうちゃんは中川先輩を下げた。


「…谷口」


「…こんなこと言いたくねーが、良い試合だった。また闘えるといいな」


 谷口はこうちゃんに手を出す。
 こうちゃんは笑って、手を握りしめた。


「次は負けない」

「それはどうかな」


 笑い合う二人。会場が一気に盛り上がった。
< 21 / 56 >

この作品をシェア

pagetop