cocoa 上
 桃の電話が切れてから5分が経った。
 携帯電話を握り締めて、川辺を見つめながら青ざめる私。
 中川先輩は、無言で立ち上がりポケットに手を突っ込んだ。


「…帰るか。」


 そう呟くと、歩き出す中川先輩。
 私は中川先輩と逆方向に、家があるので中川先輩とは違う方向へ向かった。

 静かに流れる川。私にこんなことが起きたのに
 通り過ぎの若い人達は笑い合って楽しそうにしていた。

 小学生が走りながら私の横を通り過ぎる。
 夫婦が仲良くのんびり散歩をしている。
 何事も無かったように時が進んでいる。

【桃。急にどうしたの?】
 携帯画面にメール送信の文字。
 桃にメールを送って無言で携帯をポケットの中に入れた。
 空を見ると青く澄んでいてとても綺麗に晴れていた。
 川辺の近くを走る電車の音。車の音。人の声。
 どんどん、胸が気持ち悪くなってきた。
 本当に人って苦しむときこうやってふと空をみて
 耳を傾けて変わらない人生を送る人を拒み続けるんだろう。
 空が青い。キラキラ輝く太陽。道行く人、楽しそうに人生に生きがいを感じてる。

 ~♪ その時。私の携帯が鳴った。
 バッ 思わず携帯を取り出し携帯画面を見る私。
 桃からのメールだった。
 【青山公園に来て】それだけの本文だった。

 私は急いで走った。青山公園、それは私と桃とこうちゃんのいつもの溜まり場だった。
 何かあったらそこで集合。語り合って、笑い合ったりした。
 とても温かい思い出の場。30分後。息を切らしながら辿り着いた、青山公園。
 ブランコに誰か乗っている。あれは、桃だ。すぐさま桃の元へ駆け寄る。

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