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第三章 すれ違い

優愛

 私たちはまだ子供だった。
 自分を犠牲にしても
 意味がないって、後から知るなんて…後悔という、言葉を。
 私たちは自分の気持ちを知ってしまった。

 四人は愛で哀しんで、愛で苦しんだ。
 すれ違い、喧嘩をして…。涙をたくさん流した。
 それは果てしなく広い空みたいに。
 キラキラ輝く宝石みたいに。澄んでいたんだね。

 あの時から、私たちは
 すれ違いを繰り返していたんだね。

 あのあと、体育館へ戻ったけど
 こうちゃんと中川先輩の姿はなかった。

 私が見た夢は、ほとんど当たっていたのかな。
 二人が喧嘩するなんて
 思ってなかったんだけどなぁ…。


 部活に途中から参加した私は
 遅れた分も頑張って活動した。

 帰りは桃が校門で待っていてくれて一緒に帰ってくれた。
 一週間経ったある日。
 あれからだいぶ時が経ったけど
 何事もなく、時を過ごしていた。
 こうちゃんと、中川先輩もどうやら仲直りしたみたいで
 二人で仲良く歩いていた。
 でも、最近教室に顔を出さない二人。
 こうちゃんとすら、一週間顔を
 まともにあわせていない。
 どうしたのかな。…大会が近いからかな。
 バスケの試合にはもうこれ以上
 迷惑をかけたくないので
 応援には行かないことにした。
 それに、バスケの試合当日は
 桃と遠出をする約束をしていたから。

 移動教室で、慌てて教室へ向かう私。
 桃は違う選択なのでもう教室にいるはすだ。
 何でこんな時に限って化学なのよー!
 ブツブツ言いながら走る私は
 階段があることに気付かなかった。
 ズルッ


「…わっ!」


 シューズが階段からズレる。その時だった。


「…危ねーなっ!お前馬鹿だろ、ちゃんと前見てろよ!」


 こうちゃんが階段を登って来ていたから腕で私を支えてくれた、
 よかった、生きてる。
 ホッとしていると、私は我にかえって急いで階段を降りる。


「こうちゃん!ありがとう!」


 笑って叫ぶと私の姿はその場から消えた。
 笑うこうちゃん。その隣で無言の中川先輩。
 あのあとから中川先輩とは一度も話していない。
 いいんだ、これで。
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