cocoa 上
 私の選んだ道が正しかったかなんて誰も知らないと思う。
 これが正しいとか正しくないとか
 そんなのどっちでもいいんだ。
 自分が決めたことなんだからそれが正しいんだ。
 桃の言葉と、中川先輩の言葉。
 他人のために選んだ道。
 それが間違ってるなんて言われたくない。
 他人の幸せが自分の幸せだから。

 桃がこれで幸せになるなら、
 中川先輩が望んでいるならこれでいいんだよね。


「出会わなければよかった」


 はっと我に返る私。今は国語の授業。
 先生の読む小説の言葉に胸をうたれた私。


「ふと、思ってしまった私ですが…の後に続くこのような…」


 先生の言葉がうっすら遠く感じる。
 出会わなければよかった、
 どうしてそう感じてしまったんだろう。
 みんなが先生の読む小説を
 聞いている人もいれば
 寝てたり音楽を聴いていたり…。
 私みたいに授業と関係のない事を
 考えている人もいるんだよね。

 こうちゃんが幸せになるように、
 中川先輩もきっと誰かと幸せになるんだよね。
 嫌だ嫌だな。
 他人の幸せが自分の幸せだなんて思うわけがない。
 中川先輩への想いがこんなにも大きいなんて
 思ってもなかった。こうちゃん…。
 私どうしたらいいのかな?
 こうちゃんと…
 付き合った方がいいのかな?


「優愛…?どうしたの?」


 昼休みになって桃が
 私の顔色を見て心配そうな表情を
 浮かべながら言ってきた。


「ううん、何でもないよ♪それよりも早くお弁当食べよう!」


 弁当箱を開けて食べようとしたその時、


「でっけー口」


「こうちゃん!?」


 私の前に桃ではなくこうちゃんが座っていた。
 桃は私の横に座っていた。
 こうちゃんは私の弁当箱に
 入っていた唐揚げを箸でつまんで食べた。


「あー!私の唐揚げぇ!返してー!」


 飛びかかる私。


「な、てめー何すんだよ!?」


「唐揚げ一つだけしか入ってなかったのにぃ!」


 じゃれあう私とこうちゃん。すると、
 バンッ 机の上に鞄を置く中川先輩。


「わりぃ。」


 周りがしんとする。
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