cocoa 上
 こうちゃんとの二人での帰り道。
 私の歩幅に合わせてくれてるこうちゃんに意識してる私。
 こうちゃんは今度の試合も絶対負けらんねー、
 拳を握りながら言った。
 私は笑って頑張ってね
 そう言ってこうちゃんの左手と
 ぶつかる右手を左手でつかんだ。

 私、こうちゃんを意識してる…。
 すると、私はこうちゃんの右手の傷を見た。
 私を守ってくれたときの傷。

 谷口との試合で怪我は悪化して
 傷が開いちゃったみたいだけど、
 こうちゃんは頑張ってリハビリを
 重ねて今じゃボールを握れるようになっていた。
 こうちゃんの右手には傷が残っている。
 私にも責任がある。こうちゃんは私が
 右手を見ていることに気付いて
 右手を前に伸ばして言った。


「俺、この傷見る度にさ。あー俺優愛を守ったんだぁって実感するんだ!」


 八重歯を見せながらこうちゃんは笑った。
 そんなこうちゃんに愛しさを感じた。
 何でこの人は本当に…。


「だからさ、優愛は自分のせいにしなくていいんだかんな!俺が自分で望んだことなんだし♪なっ?」


 馬鹿で真っ直ぐなんだろう。
 だから、こうちゃんはモテるんだね。
 私の目には涙。私は優しく笑って、


「うん…ありがとう。こうちゃん…!!」


 手を口に当てて頬を赤く染めた。
 私の長い髪が靡く。
 こうちゃんの頬が赤色に染まった。


「優愛っ!!」


「…なぁに?」


 こうちゃんが突然私の肩を掴んだ。


「俺と俺と…結婚してください!」


 え、結婚?きょとんとする私を見て
 こうちゃんは顔を真っ赤にした。


「ち、違くて…け、結婚じゃなくて…俺と、俺と…」


 こうちゃんは右腕を自分の口に当てる。
 顔が真っ赤だよ、こうちゃん。
 私の肩を掴んでる左手も震えてる。
 馬鹿こうちゃん。
 もういいんだよ、分かってるから。


「こうちゃん…」


 こうちゃんが私を見る。私はこうちゃんの右手を掴む。


「うん、いいよ。」


 こうちゃんはその言葉を聞いて私の目を強く見た。


「本当の本当に!?」


「うん。」


「嘘じゃないよな!?」


「本当。」


 こうちゃんの子供じみた質問を優しく微笑んで答えた。
 すると、こうちゃんは私を抱きしめた。


「やったー!!」


 こうちゃんが叫んだ。私は笑って抱きしめ返した。
 ふわっ 私の体が浮いた。


「きゃっ」


「俺の彼女だ!俺の彼女だ!」


 こうちゃんが私を回しながら喜んでいた。私は笑う。


「柳原優愛は俺の女だー!!」


 私をまた強く抱きしめた。
 愛しいこの気持ちが恋ならいいと思っていた。
 これが始まりなんだね。
 本当の私の恋の始まり。
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