どうしても君がいい。
『するどいな…』
早苗とは中学からの付き合いで。
亜美の癖や性格なんかも、よく知る仲だ。
逆を言えば、亜美も早苗に対してそうだった。
「亜美は、顔に出やすいからね。私と違って繊細だから」
わざと茶化すように、笑いながら言う。
「家庭教師の話だって、すぐには教えてくれなかったし?」
何か、確実に気付いている。
あとは亜美から話すのを待つだけ。
そう言いたげに、じっと亜美を見る。
「早苗、あのさ…」
いっそ、話してしまえば。
相談に乗ってくれるかもしれない。
しかし、亜美が口を開くとほぼ同時に、始業開始を告げるチャイムがなった。
亜美の声はチャイムと生徒達の雑音で掻き消されてしまった。
**********
結局、話す事が出来ないまま時間は進み放課後だ。
昨日はあんまり眠れなかったからか、眠くて眠くて仕方ない。
授業中、何度も寝そうになるのを隣の席の坂井 真一(サカイ シンイチ)に救われた。
『まずいな…。
このままじゃ、成績にも響くかも』
小さく溜息をつく。