どうしても君がいい。
「帰るつもりだったんだけどさ。校門のとこで織田を待ってる奴がいるから、教えてやろうと思って」
「…は?」
わざわざ、校門で待たれるような用事もなければ、そんな知り合いもいないし。
「学ラン着てたから、多分中学生だろうけど。弟とか?」
中学生。
その単語に引っ掛かる人物は一人しか居なかった。
「……弟じゃない」
間違いなく、蓮だ。
「ふーん…。早く行ってやれば?女子に囲まれてたし」
「ありがと」
何で、学校に来てるんだろう。
通り道でもないし、わざわざ何のために。
胸が、また、ざわつく。
「…一緒に行ってやろうか?」
真一の問い掛けに亜美は引き攣ったままの顔を上げた。
「何か、乗り気じゃないみたいだし」
「大丈夫、ありがとう」
真一からの提案は、亜美にはすごく有り難かった。
しかし、蓮に告白された事を知られてしまうかもしれない。
出来るなら、周りに知られずにいたい。
重たい足取りで教室を出る亜美の背中を、真一はずっと見つめていた。