どうしても君がいい。

「帰るつもりだったんだけどさ。校門のとこで織田を待ってる奴がいるから、教えてやろうと思って」

「…は?」

わざわざ、校門で待たれるような用事もなければ、そんな知り合いもいないし。

「学ラン着てたから、多分中学生だろうけど。弟とか?」

中学生。

その単語に引っ掛かる人物は一人しか居なかった。


「……弟じゃない」

間違いなく、蓮だ。

「ふーん…。早く行ってやれば?女子に囲まれてたし」

「ありがと」

何で、学校に来てるんだろう。
通り道でもないし、わざわざ何のために。

胸が、また、ざわつく。

「…一緒に行ってやろうか?」

真一の問い掛けに亜美は引き攣ったままの顔を上げた。

「何か、乗り気じゃないみたいだし」

「大丈夫、ありがとう」

真一からの提案は、亜美にはすごく有り難かった。
しかし、蓮に告白された事を知られてしまうかもしれない。


出来るなら、周りに知られずにいたい。





重たい足取りで教室を出る亜美の背中を、真一はずっと見つめていた。




< 13 / 30 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop