どうしても君がいい。

「はい、もしもし?」

『あ…織田?』

妙に緊張している真一の声に笑ってしまった。

『お前…何笑ってんだよ』
「ゴメン、真一の声が上擦ってておかしくて」

やはり笑いを堪えながら、とりあえず謝った。

亜美は真一を名前で呼ぶのは、特に他意はない。
クラスで真一と話す生徒は、みんな真一を名前で呼ぶ。
そうさせるのは、きっと真一の人柄だろう。


「話したい事って?何かあったの?」

『何かあったのは、織田の方だろ』

思わず息を呑んでしまった。

「…え?」
『例の中学生、大丈夫だったかなと思って』

蓮の事を指しているのは明らか。
しかも、帰り道でキスまでしましたなんて言えない。

「あの子は、今家庭教師をしてる子なんだよ。たまたま近く通り掛かったみたいでさ」

妙に早口になってしまった。
真一に怪しまれそうで、必死に何でもないように話す。
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