どうしても君がいい。
『……悪い。何もなかったなら、それでいい』
「う、うん。心配してくれてありがと」
何か、気づかれたかもしれない。
電話を切ってから、自分の演技力のなさに情けなくなった。
わざわざ、心配してくれた真一に申し訳なかった。
だけど、自分が中学生の男の子に告白され、キスまでされたなんて言えない。
普段メールのやり取りすらないのだから、それだけ心配してくれたというのに。
握りしめていた携帯をベッドに置き、仰向けのまま倒れ込んだ。
「何してんだろ…私」
何も、考えたくない。
瞼を閉じると、今日の蓮の顔を思い出してしまう。
そして――…。
『まさか、本気にしてたの?』
「…最悪…っ、思い出しちゃった…」
アイツの顔と声が頭の中で再生された。
蓋をしていた、記憶と感情。
もう、好きとか、いらない。
アイツの顔なんて、もう思い出したくなかったのに。