どうしても君がいい。

「真一にも、心配掛けたし…、このままはマズイって分かってるんだけど」

『は?何で真一が出てくんの?』

そういえば、心配して電話をくれた事をまだ話していなかった。
亜美は、今日の電話の内容を早苗に話す。


『…ふーん。真一がわざわざ、教室まで戻って来てたり、電話までくれたりしたんだ?』

「何、その言い方…」

わざわざ、を強調した口調が妙に引っ掛かった。

『べっつにー。とりあえず、亜美にその気はないなら、早めに言わないと傷はもっと深くなるよ』

「う、うん…」

『…言われなくても、亜美は分かってると思うけどさ』

「…分かってる」


ああ、…また頭の中で再生される。
目の前がチカチカする。
目眩だ。


『先輩の事、まだ引きずってんでしょ』

「まさか。もう、忘れたよ」

嘘だ。
嘘を言っても、早苗には通じない。

分かっていても、忘れた事にしていたいのだ。



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