どうしても君がいい。


*************



「まさか、今日も蓮くん来るとかないよね?」

「まさか。断ったよ」

昼休み。
今朝のクラスメイトの質問攻めも落ち着き、いつも通りの日常。

母親が作ってくれたお弁当を食べながら、いつものように向かいの席に座る早苗の質問に答える。
早苗は購買部で買ったパンとパックのカフェオレを両手に持ち、ふーん、と相槌をうった。

「なんかさぁ、考えたんだけど」
「何?」

おもむろに早苗が顔を寄せ、小声で話し出す。

「いっそ、付き合っちゃえば?」
「――…っ!?」
「うわっ!亜美っ、汚…っ!」
予想しなかった早苗の言葉に、亜美は食べていた唐揚げを噴いてしまった。

「な、なんでっ。昨日の今日でそんな…っ」

慌ててティッシュを取り出し、散らかった机を拭く。
制服を汚してしまったかもしれないので、早苗にも一枚だけ渡した。

「だってさ、そろそろ向き合ってもいいかなって思う。いつまでも、蓋したまんまって…勿体ないよ」
「………」

返事のしない亜美に早苗は溜息を吐くと、食べ終わったらしいパンの袋をくしゃくしゃにまるめた。

「いつまでも、あんな人に縛られたら勿体ない。亜美も変わんなきゃ」
「…………」
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