どうしても君がいい。
「こんにちは、亜美ちゃん。いつも悪いわねぇ」
「いえ。もう慣れました」
先程までの溜息を悟られないように、亜美は笑顔で答える。
リビングまで通されながら、いつもの会話をしていると視線の先には彼が居た。
秋島 蓮(アキシマ レン)。
一つ下の学年にはなるのだが、既に170cm近くある身長から大人びて見える。
「亜美ちゃん、こんにちはっ」
亜美の姿を見つけると、満面の笑みで駆け寄って来る。
その姿はまるで大型犬だ。
元々、色素の薄い髪からゴールデンレトリバーを連想させる。
自毛が真っ黒な亜美とは正反対だ。
「こんにちは」
淡々と、答える。
その様子に蓮も慣れたもので、大して気にするでもない。
「今お茶煎れるわね。あ、紅茶がいいかしら」
紅茶で、と蓮が答えると蓮の部屋に通される。
蓮の母親は亜美に聞いたのだと、笑いながら返した。
一時間の、我慢だ。
亜美は言い聞かせながら、蓮の机に向かった。