どうしても君がいい。

なんてタイミングだろう。
どう返していいか分からず、亜美は携帯を握ったまま止まってしまった。

「織田、眉間にシワ寄ってる」
「へ?」

真一だった。
さっきまで早苗が座っていた席に座っていた。

「何難しい顔してんの?」
「別に…」

そんなに変な顔をしていたのかと、指先で眉間を擦る。

「今日、何か用事ある?ちょっと付き合って欲しいとこあんだけど」
「ないけど。っていうか、バイトは?」
「バイトは休み。じゃ、決定だな」

そう言うと席を立ち、呆然とする亜美を残して教室を出ていく。

入れ代わるように、早苗が戻ってきた。


「あ、おかえり」
「トイレめっちゃ混んでたんだよね。間に合わないかと思った」

とてもスッキリした顔で笑いながら言う早苗に、つられて亜美も笑ってしまった。

再びさっきと同じ席に座ると、亜美の携帯に目を遣る。
その視線に気付くと、慌てて携帯を閉じた。

何かやましい事がある訳じゃない。
反射的に、蓮からのメールを隠してしまった。
< 30 / 30 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

公開作品はありません

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop