どうしても君がいい。
なんてタイミングだろう。
どう返していいか分からず、亜美は携帯を握ったまま止まってしまった。
「織田、眉間にシワ寄ってる」
「へ?」
真一だった。
さっきまで早苗が座っていた席に座っていた。
「何難しい顔してんの?」
「別に…」
そんなに変な顔をしていたのかと、指先で眉間を擦る。
「今日、何か用事ある?ちょっと付き合って欲しいとこあんだけど」
「ないけど。っていうか、バイトは?」
「バイトは休み。じゃ、決定だな」
そう言うと席を立ち、呆然とする亜美を残して教室を出ていく。
入れ代わるように、早苗が戻ってきた。
「あ、おかえり」
「トイレめっちゃ混んでたんだよね。間に合わないかと思った」
とてもスッキリした顔で笑いながら言う早苗に、つられて亜美も笑ってしまった。
再びさっきと同じ席に座ると、亜美の携帯に目を遣る。
その視線に気付くと、慌てて携帯を閉じた。
何かやましい事がある訳じゃない。
反射的に、蓮からのメールを隠してしまった。