どうしても君がいい。

しかし、母親は紅茶だけ差し入れると直ぐに部屋を出て行ってしまう。

足音が遠くなると、また蓮が口を開く。

「続きからだと、数学じゃないよね」

相変わらず、真顔で亜美に問い掛ける。

「なかった事にしないでよ。俺の気持ち」

椅子に座った体ごと亜美に向くように態勢を変え、下から覗き込んでくる。


亜美が憂鬱だった、理由はこれだ。
家庭教師を始めて、一ヶ月を過ぎた頃。
蓮は亜美を好きだと言った。

最初は、軽いノリで言っただけだと適当にあしらった。
しかし、次の週も蓮は好きだと告げた。
悪ふざけ、にしてはタチが悪い。
亜美は、一つ年上。
中学生と高校生の違いだと、余裕ぶってそれとなく話題を逸らしていた。

厄介なのは、次の週。
つまりは、先週の事だ。

また、繰り返し告白された。
亜美は笑ってごまかすつもりだった。
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