どうしても君がいい。
頷いて肯定する事も出来ずに、亜美は目を逸らした。

少しの沈黙。

だけど、亜美にはひどく長い時間に感じる。

「どうしたら、信じてくれる?」

分からない。
情けない位、臆病な自分に亜美は視線を逸らしたまま俯いた。

そして、いっこうに返事のない様子に、蓮はもどかしさを感じていた。

「亜美ちゃん、俺の事考えて」


そう言うと、亜美の顎を掴んで半ば強引に顔を上げさせる。


「俺、ちゃんと答えもらえるまで諦めたくないから」

「何、言って…」

お願いだから、これ以上顔を近付けないで欲しい。
お願いだから、その声で自分の名前を呼ばないで欲しい。

名前を呼ばれる度。
冷静な自分がどこかに追いやられ、鼓動が早鐘を打ちだす。

今日は、絶対に振り回されないって決めたのに――……。

「亜美ちゃんが欲しいから諦めないよ」

こいつ、本当に中学生かと疑う程の歯の浮く台詞に、悔しながらも亜美はまた赤面してしまう。

どこからその自信が出てくるのか。

あの屈託ない無邪気な笑顔。
今、亜美の前で絶対の自信を持つ顔。

どちらが、蓮の本当の姿なんだろう。


また、今日も彼のペースで終わってしまう。

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