無音の接続詩
「私は、月島陽子です。月の島に、太陽の陽に子供の子です。私も日本生まれの日本育ち、純粋な日本人です」
私は彼女の自己紹介を受けて、そう答えた。
「それは見れば解るよ~綺麗な長い黒髪に、吸い込まれるような黒色の瞳。どこから見ても和の雰囲気が素敵だね。二人とも月の字が入ってるなんて奇遇だね~」
そんな風に褒めてもらった。ちょっと照れて、私は思わず右手で頭を掻いた。
「よろしくね、陽子」
そう言って、月乃さんが差し出した左手に、私も左手で握手した。
「よろしく、月乃さん」
思わずさん付けにしたら、やっぱり突っ込まれた。
「さんは要らないよ~」
「いや、さん付けの方が慣れてるので。私の事は呼び捨てで大丈夫です」
思わずそんな言い訳をした。どうにもさんを付けないで呼ぶことに抵抗があったのだ。
「そっか、了解。陽子がそれが良いならそれで行こう。取り敢えず、もう遅いし帰ろう」
月乃さんは、そう言ってペンダントにしているピアノの鍵で鍵をかけ、脇に置いていた自分の鞄を持って、私の左手を引いて歩き出した。
月光は、少しその勢いを弱め、私達二人を静かに照らしていた。
∞分∞秒
昇降口では、月乃さんが三年生である事が解った。私は二年生、さん付けで正解だった訳だ。
校門の警備員さんの所で、ちょっとだけ事情を聞かれた。二人とも微妙に違うけど、適当に部活が長引いたと伝えておいた。
学校と、私達の住む団地との間のクロス歩道橋に差し掛かる。
「陽子は何号棟?私は4号棟、ちなみに、実を言うとこないだ引っ越してきたばかりの転校生です」
クロス歩道橋の中央、街頭の灯りに月乃さんの笑顔が映える。私は多少ボーッと見蕩れながら、答える。
「33号棟です」
「じゃあ、左だね。私は右。おお~、また奇遇だね。4号棟と33号棟、二人で4分33秒!」
そう言って、月乃さんはクロス歩道橋の真ん中でクルクル廻った。
フワフワと跳ね回る金色の長い髪が街灯の光に照らされてキラキラと輝いていた。
街頭の更に上には、今夜の主役を月乃さんに奪われた満月。私は思わず、
「月が綺麗ですね」
と、月乃さんを見つめながら呟いた。ピタッと、月乃さんが止まり、マジマジと私を見つめる。瞬間、私の方に走ってきて、顔と顔を近づけて囁く。
「本気にしちゃうよ?」
そう言って、ニイーッと今日一番の満面の笑みを浮かべると、反転翻って右の通路へ走り出す。
私は彼女の自己紹介を受けて、そう答えた。
「それは見れば解るよ~綺麗な長い黒髪に、吸い込まれるような黒色の瞳。どこから見ても和の雰囲気が素敵だね。二人とも月の字が入ってるなんて奇遇だね~」
そんな風に褒めてもらった。ちょっと照れて、私は思わず右手で頭を掻いた。
「よろしくね、陽子」
そう言って、月乃さんが差し出した左手に、私も左手で握手した。
「よろしく、月乃さん」
思わずさん付けにしたら、やっぱり突っ込まれた。
「さんは要らないよ~」
「いや、さん付けの方が慣れてるので。私の事は呼び捨てで大丈夫です」
思わずそんな言い訳をした。どうにもさんを付けないで呼ぶことに抵抗があったのだ。
「そっか、了解。陽子がそれが良いならそれで行こう。取り敢えず、もう遅いし帰ろう」
月乃さんは、そう言ってペンダントにしているピアノの鍵で鍵をかけ、脇に置いていた自分の鞄を持って、私の左手を引いて歩き出した。
月光は、少しその勢いを弱め、私達二人を静かに照らしていた。
∞分∞秒
昇降口では、月乃さんが三年生である事が解った。私は二年生、さん付けで正解だった訳だ。
校門の警備員さんの所で、ちょっとだけ事情を聞かれた。二人とも微妙に違うけど、適当に部活が長引いたと伝えておいた。
学校と、私達の住む団地との間のクロス歩道橋に差し掛かる。
「陽子は何号棟?私は4号棟、ちなみに、実を言うとこないだ引っ越してきたばかりの転校生です」
クロス歩道橋の中央、街頭の灯りに月乃さんの笑顔が映える。私は多少ボーッと見蕩れながら、答える。
「33号棟です」
「じゃあ、左だね。私は右。おお~、また奇遇だね。4号棟と33号棟、二人で4分33秒!」
そう言って、月乃さんはクロス歩道橋の真ん中でクルクル廻った。
フワフワと跳ね回る金色の長い髪が街灯の光に照らされてキラキラと輝いていた。
街頭の更に上には、今夜の主役を月乃さんに奪われた満月。私は思わず、
「月が綺麗ですね」
と、月乃さんを見つめながら呟いた。ピタッと、月乃さんが止まり、マジマジと私を見つめる。瞬間、私の方に走ってきて、顔と顔を近づけて囁く。
「本気にしちゃうよ?」
そう言って、ニイーッと今日一番の満面の笑みを浮かべると、反転翻って右の通路へ走り出す。