狼と赤ずきんちゃん
私は怒ってまた狼を無視して歩き出した。

だが狼が発した言葉によって、私の体は凍ったように動きを停止させられた。

「お前のお婆ちゃん、殺されたぞ」

一瞬何を言われたのか分からなかった。
お前のお婆ちゃんって、私のお婆ちゃんのこと?

「何言ってんの? 嘘でしょ?」

「嘘じゃない。それにまだ殺した男がいるから家に行かない方がいい」

狼の目は真剣で、嘘を言っているようには見えなかった。

それでもそれが現実だと思えず、狼は嘘つきだと知っていたからそういうのも演技だと思った。

お婆ちゃんが殺されたなんて嘘に決まっている。
私を食べようと嘘をついているのよ。

「そんな嘘、信じないから」

私は踵を返してまた歩き出した。

「おい、行ったらお前殺されるんだぞ!」

肩に狼が手を置いて私を止めようとしたみたいだけど、私はその手を突き放すように払った。

「触らないで!」

そう怒鳴ると狼はもう止めようとはしてこなかった。
私は少し言い過ぎたかなとも思ったけれど、変な嘘をついた狼の方が悪いと思って考えないことにした。
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