桜の記憶 短編
「朝霧。泣いてもいいんだよ?」

「え?」

貴方の汗をぬぐっていた時に不意にそうつぶやいた。

「朝霧につらい思いさせてごめん。だけど、僕は大丈夫だから。泣いていいんだよ?」

そう言って総司は優しく微笑む。

私は我慢できなくてあなたの胸に抱きついた。

「っ!!総司死んだら嫌だよ?ずっと一緒に生きていこう?新撰組のために戦おう?だからお願い・・・死なないで・・・」

「うん。そうだね。僕もこれからもずっと君と生きていきたい。それに近藤さんや土方さんのために戦っていきたい・・・そう思うけど、難しいかもしれないな。」

力なく微笑む総司の顔を見ると胸が締め付けられた。

「総司・・・」

私は総司をきつく抱きしめた。

そして、穏やかな声色で声を発する。

「忘れないで。僕は何処に居ても君の幸せを願っている。君が、笑顔で生きていけることを望んでいる。だから、君は僕が居なくなった後も幸せになってほしい・・・」

「総司・・・できるなら、私、総司と幸せになりたいよ・・・そう願うことは駄目なことなの?」

「僕もそう願っているさ。だけど、現実はどうなるかわからない。お願いだよ朝霧。どうか、今の僕の言葉を忘れないでね?」

優しく微笑みながら総司は私の涙をぬぐう。

「うん・・・・」

私は精いっぱい頷いた。

そして、あなたと最後のキスをした・・・・。

この2日後、総司がは亡くなった。

そして、私はこの数日後に時をとんだのだ。
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