Purewhite Devil
ピアノの上品でしなやかな音を聴きながらお弁当のおかずをお箸でつまみ、口に入れた。


私がここに存在していないかのように、自由気ままに曲を奏でる泉堂君。


女子に囲まれてる時の泉堂君は無表情で不機嫌なオーラを放っているけど、今は無表情ながらも凄くリラックスしているように見える。


私は残り一つになったおかずを口にいれ、ミートボールを頬張りながらお弁当箱を片付けた。



「あっ！この曲の名前は知ってる。月光っていう曲でしょ？」



私は喋り終えた後にヤバっと思い、両手で口を塞いだ。


ピアノを弾く手を止めずにチラッと目線を向けられ、私は苦笑いを浮かべた。


泉堂君はすぐに目線を鍵盤へと戻し、私はホッと胸を撫で下ろした。


怒られるかと思った。



『当たり』

「――えっ？」

『曲名』



泉堂君の薄い唇が動き、短い言葉を淡々と発した。


会話してくれてるって事は、一人の時間を邪魔された事は本当に何とも思ってないのかもしれない。






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