Purewhite Devil
お弁当箱を鞄に入れ立ち上がった時にある事に気が付いた。


今まで緊張し過ぎてて気が付かなかったけど、泉堂君は楽譜を見ていなかった。


楽譜を見てもクラシックって弾くの難しいんじゃないの?


ピアノなんて弾いた事ないけど、指の動きを見ていればどれだけ複雑な曲なのかはよく分かる。



「まさか覚えてるの?」

『――――』



泉堂君は目線だけを向け何も答えない。



「楽譜見なくても弾けるなんて凄いっ!!よっぽどピアノが好きなんだねっ」

『――あぁ』



私がどれだけ笑顔で話しかけようと、泉堂君は少しも表情を変えなかった。


いきなりニコニコされてもある意味怖いけどね。


後十五分くらい昼休みは残っていたけど、私は教室に戻る事にした。


やっぱあんまり長居しても悪いよね。



「あ、のさ――たまにここでお昼ご飯食べてもいいかな?」



自分でも何でこんな事を言ってしまったのか謎だった。



『ご自由に』

「ありがとうっ!!」



だけど、泉堂君のこの無愛想な言葉を嬉しいと感じたのは確かだ。


私は第二音楽室を出て、よく分からない熱を胸に宿したまま教室へ向かって足を進めた。






< 13 / 343 >

この作品をシェア

pagetop