Purewhite Devil
薫君はもう一度ため息をつくと、静かな声でこう言った。



『あれは俺だけど俺じゃない』

「――え?」



どう言う事?


薫君の顔は冗談を言っている感じではなく、恐ろしい程真剣な顔をしていた。



「意味、分かんないよ――」

『分かんなくていい』

「何それ――そんなの勝手過ぎるよ!!人をさんざん振り回しといて肝心な事は何一つ話してくれないなんてッッ!!」



薫君は勢いよく立ち上がると、そのままの勢いで私のほうへと詰め寄った。


屈んだ薫君の顔がすぐ目の前にあり、私は息を呑んだ。


距離をとろうと後ずさったが、すぐ後ろに控えていたベッドに邪魔をされ、それ以上後ろに進む事はできなかった。


ベッドに伸びた両腕は更に私の動きを制した。


そして目の前には薫君――私は完璧逃げ場を失った。






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