Purewhite Devil
私は薫君を睨み付けた。


誰かをこんなに睨み付けたのは初めてだと思う。



『言えよ、好きって――』

「好きじゃないッッ」



薫君の顔が更に距離を縮め、私は咄嗟に目を瞑った。


キス、される――ッッ。


だけど唇に柔らかな感触が落ちてはこなかった。


その代わりおでこに温もりを感じ、そっと目を開けた。


信じられないほど近くに薫君がいる。


こんなに至近距離から見ても、薫君の目はとても綺麗で、肌は毛穴なんてないんじゃないかと思うくらい滑らかだった。



『俺はお前が好き』

「そんなのっう、そだよ――」

『好きだ、乃愛――』



酷い人――。


私の気持ちに気付いていながらあんな事して、その上ちゃんと説明すらしてくれない。


それなのに今はこうして私の体に温もりを伝えながら、好きだと囁いている。






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