Purewhite Devil
離れようと薫君の胸板を両手で押すが、彼の体はびくともしない。


そうだよね。


本当は離れたくない。


そう思っている私の力は笑ってしまうほど弱いだろう。



『乃愛に会えて良かった』

「薫君――?」



声が微かに震えているような気がした。


どんな顔をしているのかが分からないからか、不安が胸に広がっていく。


体が離れ優しい眼差しを向けられ、更に体は火照っていく。


親指で唇をそっと撫でられ、恥ずかしさのあまりどんな顔をすればいいのか分からなかった。



『もう一度――聞かせてくれないか』

「なに、を?」

『お前――乃愛の気持ち』



もう伝えてしまった気持ちなのに、私はまた口にする事を少し躊躇してしまった。


だけど――やっぱりごめんなさい。



「薫君、大好きだよ」



ごめんなさい、望先輩――。


薫君への想いが私の心を支配する程、貴方への罪悪感も膨らんでいく。


謝ったところで酷い事をしている事には代わりないのに――。






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