Purewhite Devil
契約って――ヴォラク君が言っていた様な事?


でもどうして薫君がそんな事を?


こんな非現実的な事を信じるような人だとは思えない。



「薫君は――何を貴方に願ったの?」

『母親の病気を治してやった。その代償としてその人間は俺に魂を差し出した』



菜々子さんの病気を治す為に――?


奇跡的に回復したと喜んでいた菜々子さん。


退院したら先ずは散歩をするとはしゃいでいた菜々子さん。


この事を知ったらきっと悲しむ。


そして自分を責めるに違いない。


薫君――どうしてこんな事したの?


悲しむのは菜々子さんだけじゃないんだよ?


やるせない気持ちからか、視界がぼやけていく。



『その人間はもうこの世には存在しない』

「――どういう事?」

『魂を抜いた時点で、その人間と関わりのある人間たちの記憶からは存在が抹消される』



何よそれ――。



「でも私はしっかり覚えてるじゃないッッ!!」

『お前が欲するものを恵んでやると言ったはずだ。記憶からその人間の存在を抹消してしまえば、お前の望みが無くなってしまうからな。それでは意味がない』






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