Purewhite Devil
「みんな何なの!?勝手に人を巻き込んでおいて何も教えてくれないッッ!!何で薫君がこんな目に合わなきゃいけないの!?返してッッ薫君を返してよッッッッ!!」



私は憎い彼を捲し立てる様に言葉を吐いた。


それなのに彼は表情一つ変えない。


アスモデウスさんもずっと傍観者に徹している。


この場に私の味方をしてくれる人は一人もいないんだと虚しく実感した。



『お前はその人間を愛しているのだろう?』



ルシファーの口から“愛”なんて言葉が出てくるとは思っていなかった。


この人の中に愛なんて言葉は存在しないんじゃないかと思ってしまう程、恐ろしく闇一色なのに――。



『どうなんだ』

「――愛してる、誰よりも――――」



ルシファーが纏っている、冷気の様に冷たく黒い霧の様な闇が私の体に伸びてきた。


指先から始まった震えがどんどん身体中に伝染していく。



『お前がこの人間を愛さなければ、この人間は死なずに済んだ。まぁそうなっていれば、母親は助からなかったがな』

「えっ――?」

『お前が殺したんだ』



私が――殺、した?


彼の妖艶な笑みは、私を闇の奥底へと突き落としていくようだった。






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