Purewhite Devil
静かな水の神殿に、暫く泉堂 薫のすすり泣く声が響いていた。


ガブリエルもルシファーもそんな彼に声をかけることはしなかった。


悲しい泣き声が響きながらも神殿の中には光が差し込み、美しかった。


泉堂 薫は顔をあげ涙を拭った。



『乃愛を助ける方法はないのか?』

「今の状態のノアを救うのはとても難しいわ」

『どうしてだよ!?』

「魂が小さくなり力をなくし掛けているからよ。それは病気とは違うの」

『もう一度俺がーー』

「何を言うの」



ガブリエルの厳しい声に泉堂 薫は息を飲んだ。


ガブリエルの真剣な表情は元が美しいせいか、迫力がある。



「貴方を助けたいが為にノアは傷付いてでもたった一人で戦ったの。それなのに、また貴方が魂を掛けてノアを助けたらノアの想いはどうなるの?」

『だったら俺の気持ちはどうなるんだよッッ!!』



泉堂 薫の見つめる先には穏やかに眠る乃愛の顔があった。


今までの乃愛との思い出が一気に頭の中を駆け巡る。


乃愛の屈託のない愛らしい笑顔が忘れられなかった。



『お前の魂ごときで今のその女を救うのは無理だ。魂事態が無くなろうとしているのだからな』





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