Purewhite Devil
薫君――。


そう心の中で呟くだけで満たされてた。


だけど今は私を執拗に苦しめる。


優樹菜に手を握られ顔を上げた。


いつもの元気な笑顔の優樹菜。


今はその中に優しさも含まれているような気がした。



「行こう」

「――次は何処に?」

「だから伊集院先輩のところだよ」

「いや――何で?」



人の話聞いてた?


それにこんな顔で知ってる人に会いたくないんだけど――。



「もう付き合っちゃいなよ」

「こんな状態で!?」

「こんな状態だからだよ。伊集院先輩に甘えちゃいなよ。私は辛くて寂しくてしょうがない時に、誰かを頼るのって悪い事だとは思わない」

「でも――」



それって伊集院先輩を利用しろって事だよね。


ろくに話も聞かないまま勝手に終わらせて、今更そんな事できるわけない。


都合よすぎるよ。


それに余計辛くなりそう。






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