Purewhite Devil
頬に感じる温もり。


遠慮がちに触れる手。


私も彼に触れたいと思った。


理由は自分でもよく分からない。


心にできた穴を塞いで欲しいからかもしれない。



『僕じゃ駄目?』

「――――」

『僕なら乃愛ちゃんにそんなに辛そうな顔をさせたりしない』



伊集院先輩の目を見ることができなかった。


少し落とした目線の先には彼の唇。


その唇からはいつだって優しく甘い言葉が溢れてくる。


今の私にはとても魅力的な誘惑。



「私――好きな人がいるんです」

『うん』

「一方的な片想いで付き合える見込みも全くなくて――フラれたも同然で――でも、彼が頭から離れないんです」



ガタッという椅子が動く音がしたと同時に私は腕を引かれ、温もりに包まれた。


甘い香りに酔ってしまいそうだった。



『僕の事をその彼だと思ってくれてもいい。それでもいいから傍にいてほしいんだ』

「伊集院、先輩――」

『どうしようもないくらい好きなんだ。僕と付き合ってほしい』






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