Purewhite Devil
口を開くよりも先に涙が溢れた。


優しい伊集院先輩に酷い事をしてる。


そう思いながらも、すがってしまいたい気持ちに私の心は苛まれ始めていた。



「わ、たし――」

『難しく考えなくていいんだよ。乃愛ちゃんは手近な僕を利用すればいい。それでも僕は、触れられる距離に君がいてくれるだけで幸せなんだ』



震える声を包み込む、伊集院先輩の穏やかで透き通るような声。


ゆっくりと彼の顔を見上げると、笑顔の彼と目が合った。


いつもの神々しい笑みではなく、甘さを含んだ可愛らしい笑みだった。



「どう、して――そんなに想って、くれるんですか?」

『どうしてだろう。理屈や根拠なんて関係なく、乃愛ちゃんが好きなんだ。こんな言葉じゃ納得してもらえないかな?』



困った様に微笑む伊集院先輩に首をふってみせた。


彼の背中に腕を回し、胸に頬を預けた。



「宜しく、お願い――しま、す――」



彼の腕に力が込められ更に温もりを感じた。


この感じを知っているような気がする。


何故だか懐かしさが胸に広がり、止まっていた筈の涙がまた一粒、二粒と溢れはじめた。


穏やかな気持ち――だけど、どうしてこんなに苦しいのかな――。






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