Purewhite Devil
『乃愛ちゃん』



廊下から教室の中を覗く伊集院先輩。


最初は伊集院先輩が顔を覗かせるたび女子の悲鳴が煩かった。


今ではみんな慣れてしまったのか、見てはいるが悲鳴をあげなくなった。


お弁当箱の入った鞄を肩にかけ、伊集院先輩のところに駆け寄った。



「今日は何処で食べますか?」

『体育館の裏は?日陰で風通しもよくて涼しいんだ』

「じゃあそこにしましょう」



違和感なく握られた手。


キュッと握ると握り返してくれる。


何処にいても目立つ彼。


女子からは殺気を纏った視線を浴びせられるのは毎度の事。


そんな女子から守る様に、彼は私と距離を縮め囁く様に声を漏らし、甘い空気で周りとの間に壁を作ってくれる。



「本当だぁ――涼しいし人もいないからゆっくり食べられますね」



私たちはコンクリートの上に並んで腰をおろした。


コンクリートはヒヤッとしていて気持ちがよかった。


こんな穴場があったなんて。


今まで思い付かなかったな。






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