Purewhite Devil
風が吹く度に髪の毛が頬を掠める。


何か結べるもの持ってくればよかったな。



『綺麗な髪の毛だね。伸ばしてるの?』



まるで今から口付けでもするかのように髪の毛を掬い上げる伊集院先輩。


映画のワンシーンの様に優美な仕草だ。



「毎年夏になるといつも短くしてたんですけど、伸ばしてみようかと思ってます」

『短い髪の毛の乃愛ちゃんも可愛いんだろうね』

「そんな事ないですよ。こんな私を好きだと言ってくれる伊集院先輩は変わり者です」



私は笑いながらお弁当箱を片付けた。


髪の毛から離れた伊集院先輩の手が私の頬に触れた。



『望、だよ』

「え――?」

『そう呼んでほしい』



有無を言わせない神々しい微笑み。


私はこの笑みに弱い。


彼はその事に気付いているのかもしれない。



「望、先輩――」



彼は眉尻を下げ、困った様な笑みを溢した。



『今はまだそれで我慢するよ』



苦笑いを浮かべていると、彼との距離が段々と近付き私は目を閉じた。






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